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高齢者の消費者トラブル 「消費者白書25年版」消費者庁より名古屋市瑞穂区 | 相続登記・相続手続 成年後見 遺言書 | 丸田司法書士事務所

category : 消費者問題 2013.8.14 

第1節 高齢者を取り巻く社会経済状況

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65歳以上人口(老年人口)の0~14歳人口(年少人口)に対する比率である老年化指数の長期推移を見ても、1960年の19.1から2010年は175.1となり、高齢者数が15歳未満の子どもの数を大きく上回る状況となっています。

そして、2060年にはこの指数が437.8になり、高齢者が子どもの4倍以上になるものと推計されています。

高齢者は、収入・貯蓄や健康状態、生活スタイルなどが他の世代とは異なっており、それらが消費者トラブルを招きやすくする不安の背景ともなっています。

 

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世帯主が定年退職を迎える時期になると、年間収入は減少するものの、退職金が入ることから貯蓄額は大きく増加し、住宅ローンの返済を終え負債が減少していく世帯の状況

がうかがえます。そして、これらの世帯では貯蓄と年金が老後の生活資金となっていきますが、60歳代と比べ70歳以上では貯蓄額が減少しており、貯蓄を取り崩して生活していることが垣間見える結果となっています。よって、高齢期になると収入が以前ほど得られず、貯蓄が次第に減っていく状況の中、生活資金への不安は募っていく様子がうかがえます。

 

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2012年の世帯主が60歳以上で無職の高齢無職世帯の家計収支をみると、1か月当たりの平均実収入は約18万円で、そのうち9割近くを占めているのが公的年金等の社会保障給付です。それに対して、直接税や社会保険料等の非消費支出が約2万3,000円、いわゆる生活費である消費支出が約20万6,000円で、収入の不足分約4万8,000円を貯蓄の取り崩しなどで充てています。

総世帯のうち高齢無職世帯は、勤労者世帯に比べ、消費支出のうち、諸雑費や交際費が含まれる「その他の消費支出」(23.8%)、「保健医療」(6.0%)、「食料」(25.0%)、「光熱・水道」(9.0%)等の割合が大きくなっています。

 

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・高齢者、特に単身者は一人で過ごす時間が長い

・高齢単身世帯は、テレビや休養等の時間が長い

⇒高齢者は社会との接点が少なくなっている。

・男性の高齢単身者は困ったときに頼れる人がいない割合が大きい

・大都市の高齢者は困ったときに頼れる人がいない人の割合が大きい

・高齢者は健康関連に優先的にお金を使いたいと考えている

・高齢期の消費生活において身体機能の衰えによる不安が大きい

⇒高齢者は消費行動においても、健康に関心が高い。

 

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例えば、老後を安心して暮らしたいと願う人たちにとって「お金」は大きな不安材料です。年金が主な収入源の高齢者にとって、「必ずもうかる」といったセールストークが魅力的なものに見え、信じてしまうことは少なくありません。

また、高齢者になると身体機能の衰えも見られるようになり、こうした健康に不安を持つ心理を巧みについて、例えば、医薬品ではないのに「痛みがおさまる」、「血液がサラサラになる」、「がんが治る」などの効能・効果が実際にはないにもかかわらず、あるかのような説明をして、高齢者に健康関連の商品やサービスを購入させる手口が報告されています。

さらに、一人暮らしだったり、家族と住んでいても外出する機会が減り、自宅で一人で過ごす時間の多い高齢者は、「話し相手が欲しい」と感じることも少なくありません。そんな心理につけ込み、高齢者の話し相手になるなどして近づき、話をするうち、「親切にしてくれていい人だから」と相手を信用させ、例えば、日常生活で通常必要とされる数量を著しく超える商品等を契約させるケースや、事業者が入れ替わり立ち替わり商品やサービスの勧誘をして、本来購入する必要のないものの契約を次々と繰り返させるケースなどが報告されています。

 

第2節 高齢者の消費者トラブルの実態

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高齢者の全国の消費生活センター等に寄せられる消費生活相談件数は、2004年度から2005年度にかけては、架空請求に関する相談が増加したこと、2008年度以降は、金融商品に関する相談が増加したこと等の要因により、相談件数は増加傾向をたどっています。

2007年度の15万4,035件を基準としてこれを100とすると、2010年度が18万9,569件で、123.1と2割

以上増加し、2012年度は20万7,513件で134.7と3割以上増加と、年々増加傾向にあります。

高齢者人口は2007年を基準として2012年は112.1と、この5年の増加率は約1割であるため、高齢者の消費生活相談件数はこれを大きく上回って増加していることが分かります。

 

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高齢者のトラブルとしては、店舗購入、訪問販売、通信販売、電話勧誘の他に、マルチ取引(連鎖販売取引、俗にねずみ講という)、ネガティブ・オプション(送り付商法)、訪問購入(押し買い)など多様化してきています。

高齢者の消費生活相談件数の前年度からの増減率に対する各販売購入形態の寄与度を見ると、2006年度から2008年度にかけて、「訪問販売」は前年度比で減少が続いています。

「電話勧誘販売」は2010年度以降、前年度に比べ増加が続いており、近年の高齢者からの相談件数の増加は「電話勧誘販売」の増加が一因であると考えられます。

 

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「ファンド型投資商品」が相談件数のトップに

高齢者の相談における上位商品・サービスの詳細を2003年度と2012年度で比較してみると、2003年度は「フリーローン・サラ金」が1万5,000件近くを占め、その他「ふとん」や「浄水器」等の家庭で使用する商品やサービスが上位を占めています。 一方、2012年度は最も多いのが「ファンド型投資商品」で、「フリーローン・サラ金」、「公社債」も上位10位以内に含まれるなど、いくつかの金融商品が上位に来ています。

 

金融商品には流行が見られる

金融商品で、主な商品別に相談件数のピークを見ると、2010年7-9月期に「デリバティブ取引」、2011年1-3月期に「未公開株」、同7-9月期に「社債(契約先が金融機関等でないもの)」、同10-12月期に「ファンド型投資商品」がそれぞれピークとなっており、金融商品の流行のピークの差が見られます。

この傾向の背景については一概には論じられませんが、2011年1月の商品先物取引法全面施行など規制導入や注意喚起と、当該規制対象となった商品に関する相談件数の動向に一定の関係があることがうかがえます。

 

相談内容が詐欺的なもののうち、利殖商法の割合が増えている

詐欺的な手口で儲け話を持ちかける勧誘が高齢者に向けられている実態がうかがえます。

 

二次被害も高齢者で増加

以前契約をした商品・サービスについて「解約してあげる」、「損を取り戻してあげる」などと説明し、これまでにあった被害の救済を装って被害に遭った人を勧誘し、金銭を支払わせるなどの手口による「二次被害」も、近年高齢者に目立つ被害です。

 

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健康食品の送り付け商法

「以前お申し込みいただいた健康食品を今から送ります」などと突然電話があり、申し込んだ覚えがないと断ったのに健康食品を強引に送り付けられるといった相談が数多く寄せられています。

送り付け商法に関する件数の推移を見ると、2012年度に大きく増加し、1万3,675件と、前年度比で約5倍となっています。

 

いわゆる「終活」に伴う消費者トラブル

最近では、一人暮らしや夫婦のみの高齢者が、周りに迷惑をかけたくないとの思いなどから、葬儀、墓、遺産相続など自身が死を迎えた際の準備を生前にしておく、いわゆる「終活」(人生の終わりのための活動)が盛んとなっており、それに伴う消費者トラブルも発生しています。

葬式に関する相談内容は、「価格やサービス内容について十分な説明がない」、「質素な葬儀を希望したのに高額な料金を請求された」など、急な契約によって事後的にトラブルになるものが中心ですが、近年、葬式を執り行う前の解約に関するものも目立ってきています。

自宅を担保にして「年金」がもらえると巧みに勧誘し、実のところは担保ではなく、持ち家や土地の買取りであったとの相談も寄せられています。

 

テレビショッピング

テレビショッピングでは返品に関してのトラブルが多く見られます。テレビショッピングは通信販売に当たるため、クーリング・オフ制度はありませんが、事業者は返品条件を表示することが義務付けられています。適正な表示がなされていない場合には、消費者は商品等を受け取ってから8日間、解約することが可能です。ただし、解約した場合の返品にかかる費用は、消費者の負担となりますので、いずれにせよ、印象だけで購入を決めず、商品等の使い方や使用上の制限などを事前に確認するなど、申込は慎重に行うことが重要です。

 

住宅リフォームの訪問販売

住宅リフォームの訪問販売に関しては、高齢者など判断力の不十分な人が狙われ、悪質な事業者による消費者トラブルが2000年代前半には社会的に大きな問題となりました。その後、消費者行政においても問題改善に向けた取組を行った結果、相談件数は減少傾向にありましたが、東日本大震災以後は震災関連のトラブルも相まって、一時期より相談件数が増えてきています。

 

趣味の作品の掲載契約

短歌や俳句など、趣味の作品を「素晴らしい作品。雑誌や新聞等へ掲載しないか」と電話で勧誘されるトラブルについての相談が、依然として寄せられています。自分の作品を褒められたり、社会のために役立つと言われたりして、嬉しく感じる気持ちなどにつけ込んだ手口で、「褒め上げ商法」と呼ばれるものです。一度限りの契約のつもりだったのに複数回掲

載する契約とされたり、解約を申し出ると、既に印刷したなどと言って解約を認められなかったりするケースもあります。また、一度契約すると次々に勧誘されることがあります。

第3節  高齢者の消費者トラブルへの対応

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悪質事業者への対応の強化

具体的な悪質事業者への対応としては、高齢者を狙った訪問購入も含めた特定商取法の厳正な執行を行うとともに、利殖勧誘事犯及び高齢者を狙った特定商取引等事犯の被害の未然・拡大防止対策を集中的に行うなど、悪質な生活経済事犯等に対する重点的な取締りを実施しています。また、悪質な手口の公表、事業者への文書等による警告、事業者名の公表の実施を行っています。

 

高齢消費者に配慮した商品・サービス提供の促進

高齢者の身体機能の衰え等に配慮した商品やサービスの提供、商品選択時や使用する際の注意点等について、わかりやすい説明に努める等、事業者に働きかけを行っています。

ほかに食料品等の日常の買い物に不便や苦労を感じている、いわゆる「買い物弱者」対策のための支援を行うとともに、先進的取組事例等に関する情報提供や、事業者・行政等の関係者による意見交換及び情報共有を行っています。

また、高齢消費者に配慮した商品・サービス提供の促進に向けて、金融機関等の関係機関・団体等に対し、意見交換等を通じて振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺に関する注意喚起を行うことにより、被害の未然防止に向けた金融機関等による取組を推進しています。

 

普及啓発・注意喚起の徹底

高齢者が消費者トラブルに巻き込まれることを未然に防止するためには、すぐに相談できるよう相談窓口を知っていただくとともに、悪質商法の手口や消費者被害の実情を紹介し、日頃からの心構えを持っていただくことが重要です。

他に、消費者啓発・教育プログラムにおける高齢者対応メニューの充実、地域の取組事例の情報共有、「消費者問題出前講座」として、高齢者及びそれを見守る周囲の方などを対象に、消費者問題の専門家を派遣し、各種の消費者問題等を分かりやすく説明する等の取組を行っています。また、高齢者に被害が多い悪質商法の手口や、注意すべき製品事故、製品リコールなどの情報を分かりやすくコンパクトにまとめたメールマガジンを発行しています。

 

見守り体制の強化

高齢者のトラブルは本人からだけではなく、周囲が気付いて対応する必要があり、消費者トラブルの未然防止や拡大防止のためには、見守り体制の強化が不可欠です。

このため、ケアマネジャーやホームヘルパー等の介護従事者と消費生活センター等との連携や、成年後見制度利用支援事業、一人暮らしの高齢者を見守るネットワーク作りなど見守りの先進的取組の情報収集及び普及促進等、具体的な体制強化に取り組んでいます。

 

相談体制の強化

消費者庁では、地域における消費者行政に積極的な地方公共団体の取組を下支えできるよう、地方消費者行政活性化基金を活用し、消費生活相談窓口の新設等の地方行政の支援や、悪質事業者による消費者被害の防止の強化等の先駆的なテーマを国から提案して地方公共団体と問題意識を共有するなど、財政支援も含め全力を挙げて

取り組んでいます。

さらに、高齢者が相談できる機会を拡大するべく、身近な窓口を案内する全国共通の「消費者ホットライン(℡0570-064-370)」の周知徹底により、相談体制を強化しています。

 


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